回路計算 - ADコンバータ
概要
ADコンバータは、連続的なアナログ信号をデジタルの離散値に変換する装置である。
例えば、マイクで拾った音声の電圧波形や温度センサからの電圧出力等のアナログ信号を、コンピュータで処理できるデジタルデータに変換する。
分解能は、ADコンバータの性能を示す重要な指標である。
これはビット数で表現され、8ビット、10ビット、12ビット、16ビット等が一般的である。
例えば、8ビットADコンバータの場合、入力範囲を256段階に分割できる。
サンプリング周波数も重要なパラメータとなる。
これは1秒間に何回のサンプリングを行うかを示しており、より高いサンプリング周波数では、より細かな時間変化を捉えることができる。
音声信号では一般的に44.1[kHz]や48[kHz]、産業用途では数M[Hz]以上の高速サンプリングも使用される。
産業機器では、センサからの電圧出力を読み取るために使用される。
温度、圧力、振動等の様々な物理量の測定に不可欠である。
オーディオ機器では、マイクからの音声信号をデジタル化するために使用される。
CDプレーヤーやデジタルオーディオプレーヤーには、高品質なADコンバータが搭載されている。
医療機器では、高い精度と安定性が要求され、心電図や脳波等の生体信号を計測する時に使用される。
変換方式の種類
逐次比較型
逐次比較型は、内部のDACで生成した参照電圧と入力電圧を比較しながら、上位ビットから順に値を決定する。
変換速度と精度のバランスが良く、様々な用途で使用されている。
デルタ-シグマ型
デルタ-シグマ型は、高い分解能が特徴である。
オーバーサンプリング技術を使用して、入力信号を高速にサンプリングして平均化することにより、高精度なデジタル値を得ることができる。
音声機器や精密計測機器でよく使用される。
フラッシュ型
フラッシュ型は、最も高速な変換が可能である。
ただし、回路規模が大きくなるため、一般的に低分解能のものが多い。
オシロスコープ等の高速波形観測装置で使用される。
ADコンバータに必要な最小ビット数
ADコンバータの最小分解能 (LSB) が があるとする。
この時、 の電圧が計測できるADコンバータに必要な最小ビット数を求める。
- LSB (ADコンバータの最小分解能)
- 測定範囲
まず、必要なビット数を求めるには、何個の区分が必要かを計算する。
区分数 = (最大値 - 最小値) ÷ LSB
次に、この区分数を表現するために必要なビット数を求める。
となる最小の整数nは、 なので、最小で22[ビット]必要となる。
したがって、このADコンバータでは、最小で22[ビット]が必要となる。
これは、以下に示すように検証することができる。
- 22[ビット]は、 通りの値を表現できる。
- 21[ビット]では、 通りしか表現できず、不足する。